初夏のような東吉野の鍛錬場 平成26年6月21日 撮影:宮田昌彦
正宗賞の楯の裏に8名が刻んだ銘を見ながら談笑。平成26年6月21日 撮影:宮田昌彦
過酷な夏場の鍛錬を見せて頂いた。私たちも汗びっしょりになった。
平成26年6月21日 撮影:宮田昌彦
河内國平親方に半年ぶりにお会いした。東吉野の鍛錬場も庭の木々は 青紅葉やあじさいが咲き、初夏を思わせる景色。ここも梅雨時期の蒸 し暑さは大阪とさほど変わりなく、出迎えてくれたあや子奥さんも、 「今日は蒸し暑いね」と。挨拶も早々に鍛錬場に移動する。暗がりの 中、下鍛えの火が青く燃える。数分後、手鎚が鉄床に響く音「カンカ ンカン」で金田君がさっと向鎚を握る。何度も撮影しているが息を止 める瞬間だ。カメラ越しとは違う空気があたりを鞴の音だけにし、炎 がさっと大きくなった。よっし。親方の声の後、大きな爆発音ととも に、鍛錬が始まった。蒸し暑い中1時間近く下鍛えで2度ほど折り返 し、鍛錬はひとまず終了。おい、首直しとけよ。金田君に一言掛け、 仕上げ場に案内された。今回は10年ぐらい前に異業種交流会のメン バーできた5人を含め6人で見学させて頂いた。
この度、親方は平成 26年度公益財団法人日本美術刀剣保存協
会新作名刀展で正宗賞を受 賞されて、お忙しい中、半年前から私とスケジュールを調整いただき 実現したのだ。「あんただけやで、正宗賞とってから全部断ってるね ん。」正宗賞内定時にわざわざ私にも電話が親方からあり、私もおも わず大きな声を電話口であげた事を思い出す。親方の東吉野にある鍛 錬所の展示客間には、ずっしりと重い受賞楯飾られていた。第一回の 受賞者銘(受賞者が自ら楯の裏に銘を刻む)昭和36年の藤村國俊刀匠 が初で実に53年目で8名回数で15回と非常に名誉ある賞なのだ。 このような楯を見る機会も触れる機会もまれな場面に出会えて、今日 は非常に感動した。親方の話も終始にこやかで、いろいろな話題にな った。そのなかでもこの賞を取れたのは「いじめられんかったら、あ かんかったやろな」との呟くような一言に、同席の友人が感銘を受け ていた。いつもの事だか、親方の話題は息子さんの話や、お弟子さん 、隅谷丁子や相州伝、宮入昭平は正宗賞に名を連ねていない話まで、 多方面に進み、有意義な時間を過ごさせていただいた。参加した6人 も皆、それぞれ受け取れた【何か】があり、口々に帰る道中は話に花 が咲いた。来年も正宗賞をぜひ、親方には受賞してもらいたいと思う。